UNCTAD事務局長スパチャイ氏のスピーチ (於・有機食品に関する国際会議(ITF会議))

2008年10月6日、7日にスイスのジュネーブで有機食品に関する国際会議(ITF会議)が開催されました。7日午後の公開会議でUNCTAD事務局長スパチャイ氏がおこなった世界の農業のあり方についてのスピーチをご紹介します。(ITF会議の概要については「オーガニックコラム」で報告しています。)

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NCTADスパチャイ事務局長のスピーチ(日本語訳)
第8回ITF会議(ジュネーブ)
国連関連諸機関高官出席の公開会議にて

世界の農業生産方法は過去数十年間どちらかと言うと無視されてきました。しかしこの会議は、農業生産方法が国際的な様々な政策討議の中心課題になってきた大切な時期に開催されています。ここ数ヶ月間の食糧価格の高騰のより、発展途上国での悲惨な農業の状態に注目が集まりました。そこでは高価格に対応して農業生産を増加させることが出来ませんでした。数年に亘る農業投資の減少、不十分な農業支援や先進国からの食糧援助の減少などにより、発展途上国特にアフリカなどの国の農業を弱体化させました。更に石油価格高騰により化学肥料や化学資材の費用が上がり、状況を悪化させています。

今年初め、IAASTD(開発のための農業の知見・科学・技術の国際的評価委員会)は、社会の崩壊や環境破壊を避けながら、世界が人口増加や気候変動に対応して、貧困や飢餓を乗り越えていくためには、農業のあり方を劇的に変える必要があると結論づけました。私たちは有機農業がこれらの問題を解決する最良の選択であると確信しています。以下にその理由を述べたいと思います。

*Dr. Supachai Panitchapakdi, Secretary-General, UNCTAD
*UNCTAD(UN Conference on Trade and Development国連貿易開発会議)
*IAASTD(the International Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology for Development)は、400人の専門家と幾つかの国連関連機関によって支えられている国際委員会)

収入の増加

認証を受けた有機農産物はより高い値段を支払う意志のある先進国の消費者へ向けて有機農産物を輸出することで、開発途上国の有機農家の収入増大につながります。過去20年間、世界の有機市場は年間15%以上の成長率を保ってきています。2006年には全世界で認証された有機食品の売り上げは2005 年より20%増加し、300億ユーロ(約5兆円)を超へたと推計され、2012年には520億ユーロ(8兆3千億円)に達すると見込まれています。販売は北米とヨーロッパに集中していますが、有機の生産は世界の各国で行われており、途上国からの輸出も増大しています。

有機農業はまた、特に小規模農家(つまり世界の貧困層の大半)に適した生産方法です。資源の乏しい有機農家でも、それほど外部からの資材に依存する事はなく、より高く、安定した収量と収入があり、食糧の安全保障も高めています。アフリカ・アジア・南米での調査では有機農家はより高い収入があり、それは更に食糧安全保障にも寄与します。アマルチャ・セン氏の研究に拠ると、飢餓の原因は食物の不足だけではなく、既存の備蓄食糧の代金を支払うことができないということも要因です。有機食品の輸出によるより高い収入は、開発途上国の小規模農家が、より価格が上昇した場合の食糧を購入することを可能にします。

生産力の向上

有機農法は必ずしも収量を下げるとは言えません。アフリカの114のケースを分析した最近のUNCTAD-UNEPの研究では、関連するトレーニングを行い、慣行の農場を有機的管理に農場を転換した結果、平均で116%の農業生産性の増加につながったことを明らかにしました。そのうえ、有機農法は、農家の伝統的な知識と多様な伝統農法という豊かな遺産に基づいており、その遺産を生かします。

外部資材への依存低減

有機農業は農業生態系や地域の循環を利用し、外部からの投入に頼らないで、持続可能な環境保全型の農業方法です。従って有機農家は化学肥料や農薬価格の上昇に影響を受けにくいのです。実際に農業資材は石油価格の高騰によって高価になっており、化学農業資材を使用しない有機農業は競争力を高めています。地元の再生可能資源の利用は、自分達が手に負えない外部の不安定さに起因する農村社会の脆弱性を減少させます。

環境負荷の削減

環境問題に関心が高まり、気候変動が切迫している時代に、有機農業方法はもう一つの重要な利点を担っています。有機農業は農業用化学物質による環境汚染をしません。また、世界では農薬など農業用資材からの汚染が職業由来の病気と死亡の主要な原因となっているので、有機農業は生産者とその家族の健康被害を減らします。有機農業は農場内と近隣の生物多様性と自然環境を保護します。また、土壌の肥沃度と土壌構造を改善し、生産性を高め、それにより保水性を高め、環境変化に対応します。更に慣行農業より少ないエネルギーで生産し、又炭素を固定する機能により気候変動の緩和に寄与しています。

このようなことから有機農業は国連Millennium Development Goalsを達成するため、特に貧困問題と環境問題解決の目標を達成するための力強い手段と確信しています。現在有機農業は世界の農地の2%を占めるにすぎないニッチですが、その潜在力はまだ十分に探求されておらず、その拡大の可能性は多くあり、開発の重要な道具として私達が十分に注目するに値します。

課題

しかし、開発途上国にはこれらの機会を捉えるには、生産能力を向上させたり、市場参入するに際しての困難などいくつかの課題があります。

国際的なオーガニック市場成長の妨げとなっている要因の1つは認証の問題です。主要な制限要因は 有機生産物を物流として供給できるかどうかと言うよりも、むしろ製品が「有機性の本質」が定められた評価基準に従って確かめられたものであるかどうかの問題です。

国際的に環境問題の意識が高まる今、有機食品など環境に配慮した商品の取引に技術的な壁があることは皮肉なことです。

環境に優しい商品は一般の商品に要求されている事項をすべて満たすべきです。さらに環境に優しいということの証明を提供しなければなりません。例えばある一定の基準に従って生産・加工し、そのことが権威ある審査機関または承認を受けた認証機関によって公正に確認されていると言う証明を掲示できなければなりません。当然、個々の市場、場合によっては個々の小売業者にさえ、独自の規格と適合性評価要件があります。しかし、これらのシステムの間にはお互いに運用できる能力は少ししか、或いは全くありません。

これら多くの要求事項に従うことは先進国の大農家でさえ骨を折る仕事です。開発途上国の小規模農家にしてみれば有機市場を彼らの手の届かないところに持って行くようなものです。これは貧困緩和と環境保護を目的とする国際的に共有された目標に完全に反します。

このような理由から、ITFの役割は大変重要です。過去6年ITFは現状の問題を徹底的に分析し、改善策を提案し、さらにコンサルティングの行程を経て、この問題を解決するために役立つ具体的な二つの方法を開発してきました。

私はすべての有機の法的制度に関わる公的機関と民間機関に、今回のITF会議の成果と勧告を受け入れ、ITFが開発した二つの方法(ツール)を用いることを強く要請します。

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JONA補記;スパチャイ氏のスピーチで述べられている二つのツールについて、UNCTADのWebに載っていますが、概要を簡単に説明いたします。

このITF会議が発足した元々の理由は 次の二つの課題を取り組むことでした。

第1に、欧州、日本、米国が有機制度を確立しているが、それぞれ異なった制度であるため、有機農産物を欧米・日本に輸出したい外国の生産者は3種の認証を取得しなければならず、またそれを認証する認証機関もそれぞれの国の制度に従うことになっており、そのために費やす人件費と認証経費が国際貿易の大きな制約となっていることです。例えば、中米のコーヒー生産者は、EU認証、米国USDA認証とJAS有機認証を取得しなければ欧米・日本に有機コーヒー生豆を有機コーヒーとして輸出できないなどです。各国の有機制度が有機生産基準や認証機関に要求している要件は何か、国際的に認証機関の要件を定め、互いの認証機関を評価する方法はないか?

第2に、世界の多くの国で有機農業が盛んになってきているが、どのような考えで、どのように方法で制度化すれば、国際的な平等性を達成できるのか 換言すれば国際的に平等性評価をとり進めるにはどのような方法が望ましいか?

ITF会議では、上記課題を解決するために

  • 既存の有機認証の要件、基準及び技術的要件の国際取引に与える影響
  • 有機食品の国際取引を可能にならしめている既存のモデルと仕組み
  • 有機分野における協力、認知、平等性判断の経験
  • 調和、同等性、相互認知するために有効なモデルと仕組み

を分析し、解決策を探求した結果、二つの方法(ツール)、すなわち下記のIROCBとEquiToolを開発しました。

1) IROCB(International Requirements for Organic Certification Bodies)は認証機関に求められる要件を定めた文書で、ISO65に基づき有機食品分野に適合させている。この規格は、他のシステムによる有機食品を受け入れる方法として、政府機関或いは民間の認定(accredit)及び認証機関が使用するための参考とすることが出来ます。(注:IFOAMの認定指標(accreditation criteria)と同種の文書です。)

2)EquiToolは政府機関又は民間認証機関が他の機関の同等性を評価するための方法を定めた文書で、世界の或る地域の基準が他の地域の基準と同等である時期を決めるための手続きと規範です。

但し、ITFは民間のIFOAMの基準と政府間のコデックス基準を支持しており、これらの基準に基づいて、調和と同等性を促進したいとしています。

JONA補記部分:2008/11/17追記
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監修:JONA
日本語訳:三好智子
(原文:UNCTADでご覧になれます。もしくはPDF形式のファイルでダウンロード可能です。)